スペイン語の長文読解に挑戦⑧ 従属節における動詞decirと接続法

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スペイン語学習者にとって初級と中級を分け隔てる大きな壁。

それは「長文の読解」です。

シンプルな構造のスペイン語であれば難なく理解できるのに、ちぃとばかし長い文になると途端に頭パーンなる。

そんなスペイン語学習者も多いのではないでしょうか。

なぜならば、僕がそうだからです。

僕がそうなんだから、みんなも同じじゃなきゃいやだ!やだやだ!

というわけで、本日は僕を含めた、長文読解に悩むスペイン語学習者へのTipsです。


以下の文、文構造の理解は余裕でできますですかねみなさま。

ぼくできない。


A mi hija le hace mucha ilusión que le digan que canta muy bien.

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本日は主節、従属節、接続詞、接続法など長文読解の鍵となる文法項目が目白押しのお得な例文でございますよ!

 

まずは一文一動詞

ここではもうお馴染み「一文一動詞」の法則に従って文を分けてみましょう。


A mi hija le hace mucha ilusión que le digan que canta muy bien.



1.A mi hija le hace mucha ilusión
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan
(彼女に彼らが言うこと)

3.que canta muy bien.
(彼女は上手く歌うということ)


ここまでは大丈夫でしょうか。

一文一動詞ってなんだ!という方はこちらの記事が役立つかもしれません。

接続詞queのおさらい

接続詞queの役割は覚えておりますでしょうかみなさま。


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接続法:名詞節 より

名詞節は、接続詞queを用いて作られます。

文中で名詞と同じ働きをする節を名詞節と呼びます。
名詞節は、文に接続詞queやsiを付けて作ります。

この「名詞節」というのは、「すること」「ということ」に置き換えて説明されることが多いです。

なので先程分割したこちらの文も、


2.que le digan
(彼女に彼らが言うこと

3.que canta muy bien.
(彼女は上手く歌うということ


こと」や「ということ」と訳してありますね。

これを「節の名詞化」と呼んでいます。

主節と従属節

1.A mi hija le hace mucha ilusión
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan
(彼女に彼らが言うこと)

3.que canta muy bien.
(彼女は上手く歌うということ)


一文一動詞の法則で分割すると3つの文に分かれましたが。

「3」は、「2」の文の「彼らが言っていること」の内容について説明なので、2と3の文はひとつのまとまりで考えるのが自然です。

なのでこうしましょう。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)

2+3.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


「1」が主節、「2+3」が従属節。

ここまではよいでしょうか。

動詞を意識しつつ、文を主節と従属節に分けることができたら、次はそれぞれの動詞の変化について見ていきましょう。

従属節の動詞が接続法になるとき

主節では、主語の娘が喜んでいて、従属節では娘が喜ぶ理由・条件を説明しています。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘をとても喜ばせる)

2.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


そして「2」の従属節では、動詞decir接続法現在三人称複数のdiganに変化しています。

従属節の接続法変化について。


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接続法:名詞節 より

主語が主節の意味から想定される主語ではない場合に使います


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意味上の主語と、従属節(名詞節)の主語が異なる場合に接続法の名詞節は用いられます。

ここで大事なのは「意味上の主語で考える」ということです。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)


「私の娘」を指す人称代名詞のleは直接目的格です。

文法上、「私の娘」は主語ではありません。
しかしながら、実際に喜んでいるのは「私の娘」なので、意味上の主語は「私の娘」になります。

文法書の解説に沿って、ここでは「意味上の主語」で考えてみましょう。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)→私の娘は喜ぶ

2.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


主節「1」の意味上の主語は「私の娘」です。

従属節「2」の意味上の主語は「彼ら」です。

主節と従属節で主語が異なります。

つまり、従属節の動詞diganが接続法なのは、「接続法:名詞節の法則」が発動しているからなのですね。

queが従属節にもう一個あるんですが

そうなってくるとですね。


2.que le digan que canta muy bien.(従属節)


この「canta」は何で接続法じゃなくて直説法なの?という話になってきませんかね。

上の方で文を3つに分けたと思うのですが、


1.A mi hija le hace mucha ilusión
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan
(彼女に彼らが言うこと)

3.que canta muy bien.
(彼女は上手く歌うということ)


この「2」と「3」も、「主節と従属節」という関係で考えられるのではないかということです。


2.que le digan(主節)
(彼女に彼らが言うこと)

3.que canta muy bien.(従属節:主節の直接目的語)
(彼女は上手く歌うということ)


「2」の主語は「彼ら」です。

「3」の主語は「彼女(娘)」です。

主節と従属節で意味上の主語が異なります。

これは「接続法:名詞節の法則」が発動するのではないでしょうか。

そう考えたみなさま。

おめでとうございます!

スペイン語脳レベルが山羊山と同レベルです!

考え方としては間違っていないと思いますよ。

しかしながら、すべてを理屈で説明できない「なんなん?」みたいなルールがあるのも外国語文法だったりします。

接続法におけるdecirという動詞には、若干注意が必要なのです。


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動詞decirの従属節の時制 より

1)肯定文
a)「~であると言う」→直説法
b)「~するように言う」→接続法

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肯定文で、「~である」と事実を述べる場合は従属節でも直説法をとるそうです。

例文のdecirも、「彼女は歌がうまい」と「肯定文の(a)」に当てはまる用法です。

だから「canta」と直説法だったのですね。

ちなみに、従属節の役割

そして最後に、従属節の役割について考えてみます。

役割とは、主語なのか述語なのか、目的語なのかはたまた補語なのか?ということです。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


従属節の「2」は接続詞のqueで名詞化されてますから、名詞として扱います。

名詞ということは、


1.主語
2.目的語
3.補語


のいずれかになります。

さて、どれにあてはまるのでしょうか。
主節の要素を考えてみます。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)


人称代名詞のleだけでは誰のことを言ってるのかわからないので「A mi hija」を補っています。

つまり、なんのこたない「le = A mi hija」です。


述語→hace(~にする)
間接目的語→le(私の娘)=A mi hija
目的格補語→mucha ilusión(とても喜ぶ)

素直に訳すと、「私の娘を喜ぶ状態にする」です。

何が娘を喜ばせているのでしょうか。

この情報が主節に欠けていますね。

つまり、この主節に欠けている部分が従属節になるわけです。

では従属節を、目的語・補語・主語に仮置きして文が成り立つか試してみましょう。


●従属節が直接目的語だった場合
彼女をとても喜ぶ状態にする、彼らが彼女に歌がとてもうまいという事を

これはなんだか不自然な文ですね。


●従属節が補語だった場合
彼女をとても喜ぶ状態にする、彼らが彼女に歌がとてもうまいと言う状態である

頑張って補語として文にねじ込みました。

主節(主語)=補語と考えると、「彼女が喜ぶこと=彼らが歌がうまいと伝えること」なので、成立しないわけでもなさそうですが、、、

いちおう残りのパターンも見てみましょう。


●従属節が主語だった場合

彼女をとても喜ぶ状態にする、彼らが彼女に歌がとてもうまいと言う事は

これが1番自然な文になりますね。

従属節は「主節の主語となる名詞節」と考えるのが一番しっくりくるのではないでしょうか。

以上を踏まえまして

本日の例文を見てみましょう。


A mi hija le hace mucha ilusión que le digan que canta muy bien.

(うちの娘は、歌がとても上手いと言われると大喜びします)


まずは「一文一動詞」の法則に従って文を分けます。


1.A mi hija le hace mucha ilusión
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan
(彼女に彼らが言うこと)

3.que canta muy bien.
(彼女は上手く歌うということ)


次に関係詞から、主節と従属節で再構築します。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)

2+3.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


動詞の変化を読み解きます。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan que canta muy bien.(従属節)
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事)


digan→接続法:名詞節
cantadecirの肯定文用法なので直説法


従属節の役割を考えます。


1.A mi hija le hace mucha ilusión(主節)
(私の娘を喜ばせる)

2.que le digan que canta muy bien.(従属節:主節の主語
(彼らが彼女に、「彼女は上手く歌う」 と言う事は)


文の要素の役割を把握した上で、日本語にしてみましょう。

僕のやり方ですが、直訳風にすると飲み込みやすい気がしてます。


A mi hija le hace mucha ilusión que le digan que canta muy bien.

(彼らが彼女に「彼女は歌がうまい」と言うことは、私の娘をとても喜ばせます)


うぇいよー!!

と、いうわけで。

長文読解シリーズももう8回目ですか。

そろそろ慣れてきましたですかねみなさま。

慣れてきたっつ―か、「いちいちこんなまどろっこしい手順踏んでたら会話では全く使い物にならないのでは?」なんて疑問が頭をよぎってる頃なんじゃねえかと思います。

もちろん、目指すべきところは「会話というスピード感の中でも実用に耐えうる反応スピード」という領域です。

しかしながら、何事にも段階というものがあります。

まず大切なのは、何となくではなく、しっかり文の要素を把握し、それぞれの要素の役割を理解することです。

そのステップをすっ飛ばしてしまうと、いつまで経っても「何となく言ってることはわかるかな…」というレベルで行き詰まってしまうからです。

時間がかかっても、じれったくても、まずは今日紹介したような手順でしっかりとした長文読解力を身に着けてゆきましょう。

繰り返していけば、反応スピードは自然と上がっていきますから。


この「反応スピード」については、拙著「外国語の筋肉」では「反射筋」と呼んで詳しく解説しています。

興味があったらお手にとってみて下さい。

外国語の筋肉: いちばん最初に読む外国語の本

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興味ないですか?

そうですか!

わたしは今日も悲しい!ですが以上、従属節のdecirにご注意!でした。


本日の参考図書

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