スペイン語の長文読解に挑戦⑥ 未来時制と接続法

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スペイン語学習者にとって初級と中級を分け隔てる大きな壁。

それは「長文の読解」です。

比較的シンプルな単文であればそれなりに理解できるのに、複数の文がくっついてある程度の長さのいわゆる「複文」になった途端にスペイン語が理解できなくなる。

そんな経験がみなさんもあるのではないでしょうか。

長文読解に欠かせない文法項目のひとつが「接続法」です。

本日は接続法、それに絡んだ関係詞を踏まえ、前回から引き続き長文読解に挑戦していきますよ。


さて以下の文、文構造の把握は余裕でできますですかねみなさま。

ぼくまだできない。


En caso de que yo no pueda, tendrás que ser tú quien presente el proyecto.

(僕が無理な場合、君がプロジェクトをプレゼンする役にならないとね)

まずは前回のおさらい

長文読解のコツは、


・動詞を把握する
・1文1動詞になるよう文を分ける


でしたね。

この辺が「それはなに??」な方は、前回の記事が役に立つかもしれません。


En caso de que yo no pueda, tendrás que ser tú quien presente el proyecto.


補足ですが、ここでいう「動詞」とは、「述語動詞」です。

つまり、不定形ではなく「活用動詞」を探します。

なので、「ser」は一旦無視します。


そして次のステップは、「1文1動詞」の原則に従い文を分けます。


1.En caso de que yo no pueda
(私が不可能な場合)

2.tendrás que ser tú
(君がその存在である必要があるだろう)

3.quien presente el proyecto.
(その人はプロジェクトのプレゼンをする)


「1」の文は副詞節の接続法。

「2」の文は直説法2人称未来形。

ここまではそれほど難しい内容ではないと思います。


問題は「3」です。


3.quien presente el proyecto.


この文がなぜ接続法なのか?

前回はここで躓いてしまったわけです。

本日はこの続きからやっていきましょう。

形容詞節の接続法

3.quien presente el proyecto.


関係代名詞のquienがあるので、山羊山はこの文が「形容詞節の接続法」とあたりをつけました。


NHK出版 これならわかるスペイン語文法
接続法:形容詞節 より

形容詞は次のような関係詞を用いて作られ、主に名詞を修飾して使われます。
・関係代名詞→que, cual, quien

しかしながら、関係代名詞のquienが使われているからと言って、何でもかんでも動詞が接続法になるわけではありません。

接続法となるには、一定の条件が必要なわけです。


NHK出版 これならわかるスペイン語文法
接続法:形容詞節 より

必ず接続法が使われる先行詞

(1)否定の意味を表す先行詞

nadie, nada, ninguno, ningunaなど

(2)「~なら何でも」の意味を表す先行詞

cualquier, cualquera, dondequiera, quienquiera,など

↑ここには該当なし。


↓それからこちら。

意味によって法が決まる先行詞

(1)基本的な用法

一般に、先行詞で表されている語が何を指しているか話し手が特定できる場合は直説法、そうでない場合は接続法になります

(2)先行詞を含まない関係詞

先行詞が特定されている場合は直説法、そうでない場合、未知の場合は接続法になります。

ざっくり言うと「先行詞を聞き手が特定できているか否か」が直説法と接続法の分かれ目と考えられます。


3.quien presente el proyecto.
(そのプロジェクトのプレゼンをする誰か)


この文の先行詞については、「quien=プレゼンする誰かさん」みたいな感じで何となくイメージできていたのでそんなに深く考えてきませんでした。

なので一旦ここで先行詞について考えてみようと思ったわけなのです。

先行詞を考える

先行詞を考えるため、一旦「2」と「3」の文をくっつけて、元に戻してみます。


2.tendrás que ser
(君がその存在である必要があるだろう)

3.quien presente el proyecto.
(そのプロジェクトのプレゼンをする誰か)

2+3.tendrás que ser quien presente el proyecto.


ここであれー?と思ったのが、quienの直前にある「」が先行詞ってことはあるのだろうか?ということです。

と言いますか、そもそもこの「」ってなに?

主格人称代名詞のtú

人称代名詞って強勢形とか後置形とか格とかあって意外と理解が曖昧であるということに気付きました。

なので、おさらいです。


NHK出版 これならわかるスペイン語文法
人称代名詞 より

主格:

前置詞後置形:ti

直接目的格:te

間接目的格:te

再帰形:se

属詞:lo

つまり、この文のは主語ということです。

2+3.tendrás que ser quien presente el proyecto.

主語が明らかな場合、スペイン語では主語が省略されますが、「君がね。」と強調したい場合など敢えて姿を表すこともあります。

そして、は主格ですから、直前にある動詞「ser」の属詞(補語)になることができません。

私達に日本人にとって、主語は「文頭」だったり「動詞の前」にあった方が落ち着きます。

なのでわかりやすく主語を文頭に置いてみます。


2+3.tendrás que ser quien presente el proyecto.

2+3.tendrás que ser quien presente el proyecto.

このようにすると、「quien」は先行詞を含んだ「とある人」と考えやすくなりますね。

quienは不特定なのか

さきほどわかりやすく並べ替えた文がこちらです。


2+3.tú tendrás que ser quien presente el proyecto.

先行詞(une persona=1人の人間)を補ってやるとさらにわかりやすい?

2+3.tú tendrás que ser (une persona) quien presente el proyecto.

関係代名詞quienが聞き手にとって不特定な場合、動詞(presente)が接続法になる。

文法書にはそのような説明がありました。

また、辞書にも同様の記述があります。


コトバンク
小学館 西和中辞典 第2版 より

quien
3 〘先行詞を中に含んで〙 …する人.
▲特定されない漠然とした人を指すときによく用いられ,その場合関係節内の動詞は接続法をとる.



2+3.tú tendrás que ser (une persona) quien presente el proyecto.

この文で言う先行詞は、「une persona=プロジェクトのプレゼンをする人」を意味するquienに含まれています。

この「プレゼンをする人」が、聞き手()にとって不特定だから接続法というわけです。

では、なぜ不特定なのか?

不特定である理由1:未来の出来事だから

確定してない未来のことなので、「プレゼンする人」が確定(特定)できないという考え方も。


東京外国語大学言語モジュール より

  1. Pedro tiene un coche que corre mucho . (ペドロは速く走る車を持っている.)
  2. Pedro quiere comprar un coche que corra mucho . (ペドロは速く走る車を買いたい.)

「2」は既に車を持ってるので車は特定できる→直説法

「3」はまだ車を持ってないので車は特定できない=不特定→接続法。

そうなると。

tendrás はtenerの二人称未来形です。

2+3.tendrás que ser quien presente el proyecto.

つまり、プレゼンするのは未来のお話。

なので「プレゼンする人」も、「僕」か「君」になる予定ではあるけれど、未確定→不特定。

ゆえに接続法。そう考えられるのではないでしょうか。

不特定である理由2:文法的に不特定

En caso de que yo no pueda, tendrás que ser tú quien presente el proyecto.
(僕が無理な場合、君がプロジェクトをプレゼンする役にならないとね)


presenteは三人称単数形です。
(主語がqueinなので一人称ではなく三人称単数)


スペイン語動詞の意味と活用形検索
VERBO より

【接続法】
現在
que (yo) presente
que (él) presente

しかしながら、例文中に出てくる登場人物は「僕」と「君」だけです。

じゃあこの「quien」は誰?という話になります。

君でもなく、僕でもない人物は登場していません。

登場していない人物なので、いわゆる定冠詞をつけられるような「特定の人」という扱いはできません。


つまり「不特定」

ゆえに「接続法」


プレゼンする人は「僕」か「君」なんだから、「不特定」ではなく「特定」なんじゃないの?

と僕は最初考えていたのですが、意味上の相関関係ではなく、文法上の都合から不特定になっていると考えることもできると。

そんな解釈もいかがですかねみなさま。

以上を踏まえまして

お疲れ様でしたー。

ここまでの内容を踏まえまして、本日の例文を見てみましょう。


En caso de que yo no pueda, tendrás que ser tú quien presente el proyecto.

(僕が無理な場合、君がプロジェクトをプレゼンする役にならないとね)


1文1動詞の原則に従って文を分けたのがこちら。


1.En caso de que yo no pueda(副詞節)
(私が不可能な場合)

2.tendrás que ser tú(主節)
(君がその存在である必要があるだろう)

3.quien presente el proyecto.(従属節)
(その人はプロジェクトのプレゼンをする)


「1」の文につまづきポイントはないので、「2(主節)+3(従属節)」の文で考えます。


2+3.tendrás que ser tú quien presente el proyecto.
(君にはそのプロジェクトのプレゼンをする人になる必要がある)


プレゼンは未来の出来事。

ゆえに、厳密に言えば、プレゼンする担当者は未確定。

そしてプレゼンをする人「quien presente el proyecto」は文法的にも未登場の人物。

つまり不特定。

そのため、presenteが接続法であると考える事ができます。


En caso de que yo no pueda, tendrás que ser tú quien presente el proyecto.

(僕が不可能な場合、その計画の発表をする人になる必要があるよ、君がね)


うぇいよー!!

と、いうわけで。

動詞が接続法になるパターンはゴーグルで少し検索しただけでもたくさん出てきます。

しかしながら、今回記事にまとめる中で、「不特定」「未確定」「未来」というキーワードから、「接続法のコアイメージ」が何となく掴めた気がします。

コアイメージを掴んでいれば、今回僕がやったように核となるイメージから考え方を展開して長文を解釈していくこともできるわけです。

「何か苦手なんだよなー…」とモヤモヤしながらお勉強するよりも、「なるほどね~」なんつってスッキリ納得しながら学習を進めた方が楽しいですしね。

僕が今日おぼろげながら掴んだ接続法のコアイメージも、近いうちにまとめられたらと思ってます。いつか。そのうち。やるよ。やるやる。

接続法という大きな壁を超えるとっかかりを掴めた気がして1人ココロも晴れやかな山羊山ですが以上、接続法徹底攻略から関係詞のおさらいを経由して長文読解に挑戦!でした。


本日の参考図書

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