スペイン語の初級と中級の間(間と書いて間と読みます)にある大きな壁。
その大きな壁のひとつが長文読解です。
本日は長文読解のカギ、関係代名詞のqueを攻略していきます。
と、
思っていたのですが、文構造を理解する前の、個々の単語で山羊山が早くも躓いてしまったので、本題に入る前にちょっと寄り道していきたいと思います。
以下の文、ちょっと不思議なところに気付きませんですかねみなさま。
具体的にはbaja natalidadの部分です。
No creo que el problema de baja natalidad por el que pasa el país se resuelva en un futuro cercano.
(国が抱えている少子化問題が、近い将来解決されるとは思いません)
口が覚えるスペイン語 より

もし「baja natalidad」なんてもう知ってるよ!
という方は、今日の内容はスキップして本編に進んでも大丈夫でございますよ。
baja natalidadは名詞なのか
baja:女性名詞
低下、下降、減少
natalidad:女性名詞
出生率
オンライン辞書で調べるとだいたいこのような意味が出てくると思います。
なので僕も、「出生率の低下」という解釈をしていました。
もちろん意味的に大きく間違っているわけではありません。
しかしながら、「スペイン語に名詞+名詞なんて用法あったっけ?」という疑問が浮かび上がってくるわけです。
「出生率の減少」には、「tasa de natalidad」という別の表現もありますが、こちらはちゃんと名詞と名詞を「de」で繋げております。
長文読解の前に、山羊山は単語でコケる。
baja natalidadって、なんだ?
動詞のbaja
スペイン語には、bajarという動詞があります。
コトバンク
小学館 西和中辞典 第2版 より
bajar:自動詞
降りる、下がる
この三人称単数現在の活用形が「baja」です。
しかしながら、前置詞deの後ろに、不定形ならともかく動詞活用形が置かれるのって、あります?
なんかこれじゃない感がありますよね。
うーん、baja natalidadって、なんだ?
形容詞のbaja
言い訳さしてもらいますと、「baja」で調べても女性名詞じゃないbajaって全然ヒットしなかったですよ。
そもそもスペイン語の形容詞って、名詞の後ろに置かれるもんだと思ってたので完全に油断してました。
コトバンク より
bajo/baja:形容詞
2 ⸨多くは+名詞⸩ ⸨ser+ / estar+⸩ (程度が)低い,(数量が)少ない.
a bajo precio|低価格で.
bajos tipos de interés|低利率.
名詞の前に置かれる形容詞だったのですね。
そしてnatalidadが女性名詞なので、bajoも性数一致してbajaになってます。
うっかり山羊山。
やっぱり思い込みってよくないですね。
形容詞の前置
スペイン語の形容詞は、基本的に名詞の後ろに置かれる後置形をとります。
しかしながら、名詞の前に置かれる前置形も無いわけではありません。
ただその場合、基本から外れる形をとるからには、何らかの意図があるわけです。
NHK出版 これならわかるスペイン語文法
形容詞の位置 より
c)名詞の前にも後にも置かれる形容詞
一般に、名詞の意味を限定したり、分類を示したりする場合は、名詞の後ろ
それ以外の場合は名詞の前に置かれることが多くなっています
形容詞の前置の意図を考えた際、以下のような考え方はひとつのヒントになるかもしれません。
nuevo:新しい
nueva casa:今度の家
casa nueva:新しい家
例えば「新居」と言っても、中古の家の可能性もあるわけです。
お友達が「新しい家に引っ越しだんだ」と話をしていて、それが中古の家だとしても、「嘘じゃないか!」とはなりません。
しかしながら、例えば不動産屋さんがその中古の家を「新しい家です」と言って売ったら、それは大問題です。詐欺です。
一方で、「昨日完成した家」だとどうでしょうか。
紛れもなく「新築」で、「新しい家」です。
お友達が「新しい家に引っ越したんだ」と言ってもいいですし、不動産屋さんが「新しい家です」と売り込んでも問題のない家です。
前置形nueva casaは、ある人にとっては中古だけど、ある人にとっては新しい家になる。そんな「相対的」な性質を感じます。
そして後置形casa nuevaは、誰が見ても変わることのない、「絶対的」な新築の家なのです。
おまけ:古い
viejo:古い
viejo amigo:昔からの友人
amigo viejo:年老いた友人
viejo amigo→形容詞の前置形→相対的
昔からの友人だけど、まだ20代かもしれないし、80歳の老人かもしれない
amigo viejo→形容詞の後置形→絶対的
70歳とか80歳。誰が見ても老人
以上を踏まえまして
本日の例文を見てみましょう。
No creo que el problema de baja natalidad por el que pasa el país se resuelva en un futuro cercano.
(国が抱えている少子化問題が、近い将来解決されるとは思いません)
baja natalidad(低い出生率)は形容詞が前置されているので、「相対的」という方向で解釈をしてみます。
数字だけ見れば、低いかどうかは判断できない。
しかしながら、例えば去年や一昨年などの過去のデータと比べて低下していたら、それは相対的な低下いうことになります。
また、自身のデータ以外にも、「他の国と比べて低い」という考え方をしてよいでしょう。
いずれにしても、「何かと比較して低下している出生率」という解釈が、一番しっくりくるのではないでしょうか、どうでしょうみなさま!
と、いうわけで。
関係代名詞queを使った長文読解攻略のつもりが、いきなり横道にそれてしまいました。
でも、こういう「なんだこれ??」を残したままでは、ただでさえ厄介な長文読解が余計カオスになってしまうんですよ。
なので一旦各個撃破とさしてもらいました。
今日解説した「形容詞の前置」をおさえつつ、次回から「長文読解攻略:関係代名詞que篇」に入っていきたいと思いますですよ。
そんなわけで以上、形容詞の前置は相対的、形容詞の後置は絶対的!でした。
本日の参考図書
コメント