前々回の記事で、仮定法現在というレアキャラに遭遇したっつー話をさしてもらいましたが。
本日はその仮定法現在の使い所みたいなところを理解していこうと思いますよ。
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、いいヤツだとX-Rayに思われる方ががはるかに重要だった)
前回までのおさらい
主語はX-Rayくんなのだけれども、なんでthinkは三人称単数形じゃなくって原形なんだ?
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、いいヤツだとX-Rayに思われる方ががはるかに重要だった)
そんな疑問から始まったお話でしたね。
あれやこれや調べた結果、どうやらこれは助動詞shouldの消えた「仮定法現在形らしい」という結論に至りました。
しかしながら、表面的な解答には辿り着いたものの、
「どんな場面で使うのだ?」
という疑問が残ったままだったので、記事を分けまして、今回は本腰入れて解明していこうぜという趣旨でございます。
文の骨組み
本日の例文は、
It is+形容詞+that~構文が用いられています。
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、いいヤツだとX-Rayに思われる方ががはるかに重要だった)
この構文は、shouldと共に用いられ、話し手の要求・勧告や願望などの意図を間接的に示すことが一般的です。
しかしながら、本日の例文にはshouldがありません。
その結果、「仮定法現在」になっているという文法書の解説でした。
shouldの有り無しで何かニュアンスを変えている。
つまり、このshouldの役割を理解すれば、仮定法現在の理解も進むのではないかと私は考えたわけなのです。
shallのイメージ
shouldはshallの過去形です。
shallのコアイメージは、「進むべき道」です。
大西泰斗さん
英単語イメージハンドブック より
shall 基本イメージ
進むべき道
そうするしかないのです。それ以外に道はないのです。
束縛されているのです。
「進むべき道」
それがshallの基本イメージ。
「この道を進まねばならない」という強制力の強そうなshall。
では、shallがshouldになると、その強制力はどう変わるのでしょうか。
shouldのイメージ
shouldは、shallよりもトーンダウンします。
大西泰斗さん
英単語イメージハンドブック より
should 弱い圧力
イメージは圧力。
とはいえ、mustのような高い圧力は感じられません。
もっともっとマイルド、それがshouldなのです。
前回の記事でも解説さしてもらいましたが、過去形は過去時制を示すだけではありません。
過去形は、確かに過去時制を表す機能もありますが、
それは「遠さ」を表す核となる機能の一部にしか過ぎないということです。
1.現在からの遠さ→過去
2.現実からの遠さ→仮定
3.相手との遠さ→丁寧
現在形shallでは、
「現実にならなければならない」
という外れてはいけない道が用意されています。
しかしながら、過去形になりshouldになると、
「実現させるべきだけどさ…」
のように、表現がマイルドになり、shallの持つ強制力から距離が発生するわけなのですね。
実現性をマイルドじゃなくしたら?
では、文からshouldを取り払い、shouldの持つマイルドな要素をなくしたらどうなるでしょう?
マイルドshouldは「実現しなくてもいいよ」という余地を残していました。
そのshouldを取っ払ってしまうのですから、「実現しなければならない」という強制力が、再び生まれることになります。
その強制力が「仮定法現在」というわけです。
引き続き徹底詳解ロイヤル英文法
形容詞の種類と用法 より
shouldを用いない場合、特にアメリカ英語では仮定法現在(原形)を用いる。
イギリス英語でも最近この傾向が見られるが、形式張った表現とされる。
「何かがなされなければならない」とか「重要である」といった意味のものである。
でもそれhave toとかmustでいいじゃん
「実現されなければならない」という表現には、have to とかmustがあります。
じゃあそれでいいじゃんって思いますよね。
have toやmustがある。
でも使わない。
仮定法現在を使う。
ここに、仮定法現在の味噌があります。
もう一度、本日の例文を見てみましょう。
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、いいヤツだとX-Rayに思われる方ががはるかに重要だった)
簡略化すると、
It is important that X-Ray think he is a good guy.
(X-Rayに良いやつと思われることは重要だ)
と、人間関係に関しての重要性を述べています。
言い方を変えると、
もしX-Rayにいいヤツだと思われれば、重要性は満たせる
という言い方になります。
「もし」となっているので、仮定の話です。
実際、まだいいヤツだと思われていません(未実現)
さらに、気に入られるかどうかは他人(X-Ray)の気持ちや感情なので、スタンレイがコントロールできる領域ではありません(不確定)
この、「未実現性」や、制御することが未知数な現象に対する「不確定性」により、仮定法という表現が必要になってきます。
未実現で、不確定、だけど、更生施設内でうまくやっていくためには、絶対に必要なこと。
そんな、不確定性と必要性のはざまで揺れ動いているさまを、「仮定法現在」で表現しているのではないかと考えるわけなのであります。
以上を踏まえまして。
「ぼくの考える仮定法現在」を踏まえまして、本日の例文を見てみましょう。
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、いいヤツだとX-Rayに思われる方ががはるかに重要だった)
thinkが原形なのは、誤植ではなく仮定法現在だから。
X-Rayにいいヤツだと思われるのは絶対に絶対に必須だけれども、人の感情なんてあてにならないし、コントロールもできない。
そんな不確定性と絶対的な必要性を踏まえて日本語訳をつけますならば、
It was far more important that X-Ray think he was a good guy than it was for him to get one day off.
(スタンレイは1日休みを取るよりも、どうにかこうにかX-Rayにいいヤツだと思わせる方が遥かに最優先事項だった)
なんか表現が難しいですが。
こんな感じでいかがでしょうかみなさま!
答え合わせ。
幸田さんの日本語訳を見てみましょう。
幸田敦子さん訳:穴 より
1日休みをもらうより、X線に気に入られる方が、ずっとずっと大切だ
「気に入られる」
という未来志向に、幸田さんは仮定法現在のニュアンスを込めたのかな~、という気がかすかにしないこともないですが…
さすがに、仮定法現在のニュアンスを日本語で表現するのは難しいのでしょうねw
まあ、仮定法現在の理解が深まったので、よしとします!
ウェイヨー!!
と、いうわけで。
ルイスのやつ三人称単数まちがえてやんのw
なーんてクスクスしなくてよかったです。
危うく恥をさらすとこでした。
今回は主語が三人称単数だから仮定法現在に気づけましたけど、一人称とか二人称のように動詞がもともと原形の場合、動詞の形からは気付けないわけですよね。
それを考えると、仮定法現在ってのはレアキャラではなく、意外とそこかしこで使われてるのかもしんないですね。
これからちょっと意識して英文を眺めてみようと思いました。
そんなわけで以上、仮定法現在はレアキャラなのか?でした!
●本日の参考図書
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