半導体のニュースを追っかけていると、必ずと言っていいほど出てくるワード。
それがウエハーです。
形は薄い円形で、大きさは30cmほど。
色はホログラミックにビカービカ怪しく輝いております。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%8F%E3%83%BC
山羊山の実家の茶の間にでも置いといたら、次の日には裏の畑の鳥避けにぶら下げられてるであろうその様相は、とても世界覇権を左右する戦略物資であるとは思えません。
「とても貴重なものなんだよ」と説明しても、そのまた次の日には茶の間の鍋敷きに使われていることでしょう。
本日はそんなウエハーについて、理解を深めていきたいと思いますよ。
ウエハーとは
そもそもウエハーとは何なのか。
IT用語辞典 E-Works より
ウェハは一連の半導体製造装置群でマスキングや露光、エッチングなどの加工が繰り返し施され、表面にICチップの微細な配線や素子などの回路パターンが形成される。
https://e-words.jp/w/ウェハ.html
私達が知っている電子回路的な何かと言へばこんな感じなのですが。

これを、ギューっと圧縮して、このウエハーと呼ばれる円盤の中に閉じ込めているというイメージでしょうか。
KEYENCE さん
半導体ウェハ・ICパターンの顕微鏡的観察と測定 より

左:従来のマイクロスコープ / 右:「VHXシリーズ」での高精細撮影(×3000)
https://www.keyence.co.jp/ss/products/microscope/vhx-casestudy/electronics/semiconductor-wafer.jsp
さらに、
一枚のウェハには同じ回路パターンが格子状に縦横に規則正しく並んだ状態で焼き付けられ、これを境界に沿って切り出していく(ダイシング)ことにより、矩形の半導体チップ単体(ダイ)を取り出すことができる。
https://e-words.jp/w/ウェハ.html
この1枚の円盤に、四角い「半導体チップ」という単位でたくさん詰め込んで、効率よく量産しているということです。

Siウェーハの大口径化(その3) ~大口径化の理由と歴史~ より
https://blog.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/process12_siwafer_reason
半導体チップとは?
ここで一旦、「半導体チップ」についておさらいしておきましょう。
半導体チップとは
私達がイメージする「半導体」とは、こんな感じではないでしょうか。

これもこれで「半導体」なのですが、この半導体の中身を見ると、先程のウエハで見た「四角い半導体チップ」が内蔵されているのがわかります。

スマホも自動車も!あらゆるモノの頭脳となる半導体の作り方 より
https://www.toshiba-clip.com/detail/p=1123
ウエハは、この「四角い半導体チップ」をズラズラッと並べるための円盤だったのですね。
何で円型なのか
ここでひとつの疑問が浮かびます。
四角い形状のものを沢山並べたいのであれば、ウエハも四角い方が合理的ではないでしょうか。
円盤に四角を並べると、明らかに無駄な部分ができてしまうからです。
日清紡マイクロデバイス株式会社さん
Siウェーハの大口径化(その3) ~大口径化の理由と歴史~ より

この答えは、ウエハの製造工程にありました。
ウエハの材料は超高純度シリコン
ウエハの材料はシリコンです。
シリコン自体はそこらへんに転がってるケイ石という石ころからとれる、まあまあありふれた素材です。
しかしながら、大変なのはそれを高純度にすることです。
どんだけの高純度が必要かと言うと、それはどれほどの高純度が必要なのかって言いますと。
イレブン・ナインと呼ばれる、9が11個並ぶ99.999999999%という純度が必要になってくるのです。
パーセントで言われてもピンと来ませんが。
例えば、お風呂いっぱいのシリコンがあったとしまして。
その中に、0.0002グラム以上他の物質が混ざっていてはいけないということになります。
耳かき一匙でとれる耳くそが0.01グラムほどと言われていますから、お風呂いっぱいのシリコンに、耳くそほどの不純物も許されないという、超絶激純度ということがわかります。
超高純度シリコンの作り方
そのような超高純度シリコンは、最終的に「チョクラルスキー法」と呼ばれる工程を経て作られるのが基本です。
チョクラルスキー法では、溶かしたシリコンに「シード」と呼ばれる棒状のシリコン単結晶体を浸け、シードに超高純度シリコンが付着(結晶化)するのを待ち、そしてシードをくるくる回しながら引き上げていきます。
説明ムズいね!
動画だとこんな感じ。
Silicon Wafer Production by MicroChemicals より
どれだけ科学技術が進歩した現在でも、結晶化しやすい環境を整えてあげることはできるけど、人間は結晶化のお手伝いまでしかできないんですねー。
くるくる回しながら自然発生的な結晶化を促すため、超絶激純度のシリコンの塊りは円柱型になります。
そしてその円柱を薄くスライスするので、ウエハは円盤型になるわけですね。
だからウエハは円い
円柱を直方体に削って、それをスライスすれば四角にできないわけでもなさそうですが、ウエハにはこの後に成形や研磨、塗布などの工程があります。
これらの工程はくるくる回しながら行うことがあるので、やはり四角より円形の方がトータルで合理的なのでしょう。
だからウエハは円盤型なのですねー。
以上を踏まえまして。
半導体チップとは、私達がイメージする「半導体」のフタを開けた中身であり、いわば半導体のコアです。
ウエハとは、そんな半導体のコアである、半導体チップがたくさん並んだ円盤だったというわけですねー。
と、いうわけで。
2021年4月12日。アメリカのバイデンさんはホワイトハウスのルーズベルトルームでこのウエハを振り上げ、「半導体は経済通商に留まらず、国家安全保障上も重要なインフラである」と熱弁し、米中半導体戦争のレベルが1段上がったと言われています。
ウエハを知ることで、半導体のなぜ?がまたひとつ解消されました。
知識をひとつ身につけたことで、今までいまいち飲み込めなかった半導体界隈の見方、特に技術的なニュースが面白くなっていくかもしれませんね。
これからの半導体市場の動きが楽しみです。
そんなわけで以上、半導体ウエハはなぜ円い!!でした。
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