先日、TSMCとサムスン電子の決算を軸に「半導体だいじょぶ?」という内容を記事にまとめさしてもらいましたが。
結論としましては、「半導体の争奪戦」からの「在庫過多」、そして現在「最終需要低下」の中における「在庫消化中」の一時的な停滞なので中・長期的にはやはり半導体業界は上向きだよという山羊山の見解でした。
しかしながら、「半導体業界」という括りで見ると確かに上向きで間違いないと思うのですが、企業個別の事情を見るとやはりバラつきはあります。
サムスン電子とTSMCの決算を振り返ってみますと、成長が鈍化しているとは言へTSMCは前年比売上でプラス成長を維持しているのに対し、サムスン電子は2022年の第4Qから売上がマイナスになっています。
「安全・安定路線のTSMC」と、「攻めの経営サムスン電子」という方針の違いの現れでもあるのですが、そんな経営方針とは別に、もうひとつ、ニ社には大きな違いがありました。
それは、取り扱っている半導体の種類です。
サムスン電子の主力商品は「メモリ半導体」で、TSMCは「ロジック半導体」です。
本日はその辺のところをお勉強していきたいと思いますよ。
半導体の大分類おさらいとWSTS
「誰でもアクセスできる情報で世界を知ろう」が当ブログのコンセプトなのは知らない方も多いと思います。
なぜならたった今思いつきで決まったコンセプトだからです。
そんなコンセプトのブログ「ぴー」ですから、山羊山はゴーグルで検索して、ヒットしたニュースサイトの記事を参考にしています。
そして、そのニュースサイトはさらにWSTSという機関のデータを元にしていることが多いです。
WSTS(World Semiconductor Trade Statisti)とは、半導体市場統計あれやこれやを無料で私達に公開してくれている有り難い団体です。
そんなWSTSが採用している、半導体製品の大分類からおさらいしていきましょう。
1.Total Discrete(ディスクリート)
2.OptoElectronics(オプトエレクトロニクス)
3.Sensor(センサー)
4.Total IC(集積回路)
4つの大分類に分かれていますが、それぞれ直近の販売額実績は以下です。
(単位は百万USダラー)
ディスクリート:30337(5.46%)
オプトエレクトロニクス:43404(7.81%)
センサー:19149(3.44%)
集積回路:463002(83.29%)
「集積回路」が8割以上を占めています。
集積回路とは、これまでにも当ブログでメインに取り上げてきたいわゆる「ウエハー」上に構成される微細回路搭載した半導体です。
本日はこの「集積回路」に絞って理解を深めていきたいと思いますよ。
●今日はコレ
Total IC(集積回路)
●後日。いずれ。やるやる。
Total Discrete(ディスクリート)
OptoElectronics(オプトエレクトロニクス)
Sensor(センサー)
集積回路の分類おさらい
WSTSでは、「集積回路」をさらに4つの製品群に分類しています。
1.Analog(アナログ)
2.Micro(マイクロ)
3.Logic(ロジック)
4.Memory(メモリー)
今日ピックアップするのは、「ロジック」と「メモリー」です。
ロジック半導体とは?
ロジック(logic)は、英語で「理論」「理屈」「思考」といった意味合いの言葉です。
半導体的な役割もおおよそその通りで、人間が脳みそを使ってグリグリ思考している、そんな頭脳労働的な部分を担うイメージです。
ロジック半導体がTSMCの強み
TSMC
四半期決算資料 より

5nm、7nm、16nmやumといったロジック半導体の技術呼称で売上のすべてが占められています。
つまり、ロジック半導体にパラメータ全振りしているのがTSMCの強みのひとつと言えるでしょう。
メモリ半導体とは?
メモリ(memory)は、英語で「記憶」を意味する単語で、こちらもそのまま半導体の役割となっています。
論理的な思考はできないけど、とにかく暗記・記憶が得意な半導体です。
メモリ半導体がサムスン電子の強み。だった。
サムスン電子の2022年決算から半導体部門(DS部門)を見ると、
全体:98.46兆ウォン
メモリ:68.53兆ウォン
このようにメモリ半導体が7割を占めています。
これがサムスン電子の強みだったわけです。
過去形?
「だった」と過去形なのは、ダイナマイト・完全・半導体スーパーエリートのみなさまでしたら既にご存じかと思いますが、サムスン電子の直近の決算は非常に悪化しております。
日本貿易振興機構(ジェトロ)
サムスン電子、第1四半期の営業利益は前年同期比95%減 より
売上高は前年同期比18%減の63兆7,500億ウォン(約6兆3,750億円、1ウォン=約0.1円)、営業利益は95%減の6,400億ウォンだった
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/05/deaa37b313015948.html
そして先日、しないしないと言っていた「減産」を決定しました。
半導体市場が世界的に冷え込む中、半導体の生産を縮小する方針を示した。
ロイター さん
サムスン電子が半導体減産へ、回復期待高まる 第1四半期は大幅減益 より
https://jp.reuters.com/article/samsung-elec-results-idJPKBN2W4001
「減産は短期的」と言っていますが、短期的な減産で済むかどうかは半導体需要が回復し、積み上がった在庫の消化次第です。
元気がないメモリ半導体
メモリ半導体は需要減、在庫過多、価格下落のトリプルパンチをお見舞いされております。
市場調査会社TrendForceによると、メモリーチップの容量超過の影響を受け、DRAMチップの価格は第1四半期に20%下落した。
電波新聞さん
韓国サムスン、過去14年で最悪 1~3月業績予測 メモリーチップ価格下落で より
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c03bdd1263a97a73dc294d52d1fd644be04596d
サムスン電子自身の在庫も高止まりな状態です。
サムスン電子の在庫資産が昨年、史上初めて50兆ウォン(約5兆1900億円)を突破した。
朝鮮日報さん
サムスン電子の在庫50兆ウォン、原材料調達費は110兆ウォン超…景気低迷とコスト高の二重苦 より
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/02/27/2023022780057.html
需要の回復も当分は見込めない模様。
2022年度通期の総出荷台数は3041万台と、2000年度以降の通期出荷台数としては過去最少になると予測された。
ケータイWatchさん
以降は、2023年度が2940万台、2024年度が2927万台、2025年度が3074万台、2026年度が2955万台と、V字回復は見込めないという。
円安や物価上昇でスマホの出荷は減少、MM総研による調査の結果は?より
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1455971.html
流石に路線変更
そんな厳しい状況の中で、経営陣さん方もこの「メモリ半導体偏重」な状態に対して「さすがにやべぇ」と危機感を感じているようで、ロジック半導体などへのバランシングに向けて動き始めているようです。
韓国サムスン電子が、ソウル市近郊に大規模な半導体工場を新設することを決めた。2042年までに300兆ウォン(約31兆円)を投資して最先端品などを生産し、台湾積体電路製造(TSMC)に対抗する。
産経新聞さん
新拠点のメインは受託生産のための演算用半導体の生産だ。
サムスンが世界をリードするデータ記憶用の半導体メモリーの生産は一部にとどまる見込み。
サムスン、半導体巨額投資へ 日韓雪解けも TSMCの背中遠く より
https://www.sankei.com/article/20230403-J5M2OGIWA5I2FI7ZXYIJCC7VYM/
新設する拠点はメモリ半導体ではなく、演算(ロジック)半導体の生産がメインだそうです。
それにしても、2042年までに300兆円ですか。
半導体を作るというのは、本当に時間とお金がかかるのですね…
以上を踏まえまして。
メモリ半導体が主力のサムスン電子。
ロジック半導体が主力のTSMC。
この違いも、直近の決算に数字として現れていたと。
そう考える事ができますね。
減産に舵を切ったとは言へ、サムスン電子の研究や設備投資へ投下するお金を見ると、縮こまっているわけではなさそうです。
まだまだ攻めのサムスン電子は健在。
2nmという微細化技術で独走を狙うTSMCと、GAAの1.4nm微細化で一足飛びの一発逆転を狙うサムスン電子。
このニ社のしのぎを削る戦いで、2023年も半導体から目が離せませんね。
と、いうわけで。
スマホをギャラクシーに変えようかなーなんて考えているので個人的にはサムスン電子を応援したいところではありますが。
安定した1.4nm量産に成功となると、メチャ速でバッテリー持ちの良いスーパー・スマホが手に入るなど、きっと私達にも多大な恩恵があることでしょう。
開発に携わっている「半導体の中の皆様」には、是非とも健康第一で頑張っていただきたいですね。
そんなわけで以上、メモリ半導体のサムスン電子と、ロジック半導体のTSMC!!でした。
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