みなさんは、英語とロシア語が遠い親戚言語だってご存知でしたでしょうか。
英語とドイツ語は、起源が近い兄弟言語です。
そこへきてロシア語は、兄弟ほど近くはないけれど、源流をさらに遡れば英語と同じ起源を持つ親戚言語である。
らしい。
その証明となるかどうかは尻ませんなのが今日のお話です。
さてみなさま以下の文。
with themのthemが何を指してるわかりますですかねみなさま。
ぼくわかんない。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去って、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持ってそれらと共に出ていった???)
例文は、ルイス・サッカーさん Holesより
可能性1:themは「少年たち」
themは「それらを」「彼らを」「彼女らを」を示す三人称複数の目的格代名詞です。
文中に出てくる三人称複数と言へば、2つしかありません。
その中のひとつが、列をなしてシャワーを浴びにゾロゾロとテントを出てゆく「少年たち」です。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去って、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持って彼らと共に出ていった???)
でも、
「少年たちはタオルと着替えを持って少年たちと一緒に部屋を出ていった」
って、なんかおかしくないですかね。
可能性2:themは「タオルと着替え」
もうひとつの可能性は、「タオルと着替え」です。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去って、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持ってそれらと共に出ていった???)
でもこれはこれで、
「少年たちはタオルと着替えを持ってタオルと着替えと一緒に部屋を出ていった」
みたいに、「タオルと着替え」が不必要に繰り返されるのが、何か不自然じゃないですかね。
文の前後
この文の中には、なんかしっくりくる「them」がなさそうに見えます。
なので文の前後を振り返ってみます。
更生施設に着いたスタンリー。
これから同じ施設でプログラムに参加する少年たちと一緒に、スタッフのペンダンスキーさんから施設のルールや目的のレクチャーを受けます。
そんな件りでございます。
読み返してみましたけど、やはりthemに当てはまりそうな登場人物は他になさそうなんですよね。
ヒントは「ロシア語」
英語をお勉強中のみなさまには参考にならないかもしんなくて大変申し訳ないのですが、この問題解決のヒントになったのは、実はロシア語でした。
僕はロシア語も苦しみ悶えながらお勉強しているのですが、その中で過去、こんな疑問を記事にさしてもらっております。
ロシア語謎の再帰代名詞 с собойの使い分け
ここで出てくる例文が↓です。
Я почти всё время ношу с собой ноутбук
(私はほとんどいつもノートパソコンを持ち歩いています)
ロシア語なのでなんのこっちゃ?って感じかと思いますが。
そのまま英語にすると↓こんな感じでしょうか。
Я почти всё время ношу с собой ноутбук
↓
I almost always take my laptop with myself.
(私はほとんどいつもノートパソコンを持ち歩いています)
で、ここで疑問なのが、
with myselfって、何?
with oneself = с собой
このwith oneselfなんですが。
ロシア語のс собойに相当すると考えてよいと思います。
with=с
oneself=собой
で、英文を見てみますと。
I almost always take my laptop with myself.
(私はほとんどいつもノートパソコンを持ち歩いています)
takeにalmost alwaysを併せているので、これだけで「常に持ち歩いてる感」は出てますよね。
でもそこに、「with oneself」でさらに追い打ちをかけるのは、「なんかクドい」と僕は感じました。
そんな経緯がありましたから、「ロシア語にはwith oneselfを伴ったなんかクドい言い回しがある」という記憶が、なんとなーく頭の片隅にあったわけなのです。
take A with one?
「with oneself(с собой)」を伴ったクドい言い回しがある。
そんな記憶がなんとなーく頭の片隅にありましたから、
今回の「themって何だ?」を考える過程で、「そう言へば…?」と思い至ることができたのだと思います。
ジーニアス英和辞典 より
take
Take your camera with you
[✘ with yourself]
「携帯する」の意味ではwith oneを伴うことが多い
「もしかして…?」とアタリを付けながら辞書を引けば、ズバリありましたよ!
takeのように用法が多くて辞書にずらずら用法が乗っている単語の場合、あの小っちぇえ文字の羅列の中からお目当ての箇所を見つけ出すのは中々しんどいんですよね。
なので、このように「こんな感じの用法があるはずだ」とアタリをつけてから探した方が見つけやすいわけです。
take AAAAAAAAAAAAAA with them
takeとwithの間の「A」が長いことも、「take A with one」という慣用句に気付き難くしている原因のひとつかもしれません。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去って、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持ってそれらと共に出ていった???)
これがもし、
taking their soap with them
とかだったら、もっと早くピンと来たかもしれないし、来なかったかもしれません。
with oneの有る無し
じゃあwith themが有るのと無いのとでどう変わんの?
って話なんですが。
これは僕の理解ですが、
お風呂行く時でも日によって持ったり持たなかったりする→with oneなし
お風呂行く時は必ず持っていく→with one あり
こんな解釈、いかがでしょうかみなさま!
ロシア語とは違ったけれど
ちなみに、ロシア語と違って「with oneself」とはならず、「with one」だそうです。
ジーニアス英和辞典 より
take
Take your camera with you
[✘ with yourself]
「携帯する」の意味ではwith oneを伴うことが多い
✘ with yourself
○ with you
以上を踏まえまして。
本日の例文を見てみましょう。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去って、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持ってそれらと共に出ていった???)
「携帯してる感」を出したい場合、「take A with one」という用法があるのでしたね。
この表現を使う場合、「A」の部分が長いとtakeとwithが遠く離れて文が分かり難くなってしまうので注意です。
当初の疑問だった「themって、何?」についてですが、この場合、敢えて日本語に訳すことはないですが、themは「other boys」のことです。
以上を踏まえて、和訳してみましょう。
Mr. Pendanski left the tent, and soon the other boys began to file out as well, taking their towels and change of clothes with them.
(ペンダンスキーさんはテントを去ると、すぐに他の少年たちもゾロゾロと、タオルと着替えを持って出ていった)
ウェイヨー!!
答え合わせ
それでは幸田さんの和訳と答え合わせしてみましょう。
幸田敦子さん訳:穴 より
ミスター・ペンダンスキーが行ってしまうと、少年たちも、めいめいタオルと着替えを手に、ぞろぞろと出口へ向かった
お手本見てもわからんw
なんとなく、「めいめい」というところに、幸田さんが感じ取ったwith themのニュアンスがあるのかなーなんて思ったりもしてますが。
各自に行き渡ってる感じですかね?
結局わからないので、
「これ、with themがあるのとないのでどう違うの?」
将来できるであろう英語ネイティブお友達との話のネタにとっておくことにしますよ!
ウェイヨー。
と、いうわけで
英語で学習した内容が、ロシア語を含め他の外国語のヒントになることはたくさんありますが。
逆は初めてかもしんないです。
ロシア語やってよかったー。
と大手を振って喜びたいところですが。
ロシア語はプーチンさんのあれで、その存在意義は薄れていくのだろうなあ…
直向きにバレエに打ち込むロシア美女に「今度公演、観に来てね」と思わせぶりにチケットを売りつけられるそんな輝く未来を夢見ているロシア語学習おじさんとしては寂しい限りですが。
ロシアとウクライナの平穏を願いつつ以上、ロシア語は英語の遠い親戚のおじさん!でした。
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